非定常および反転不能な時系列モデルの統計理論と経済分析への応用

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01530014
• 研究機関: 一橋大学
• 研究代表者: 田中 勝人 一橋大学, 経済学部, 教授 (40126595)
• キーワード: 非定常性 / 反転不能性 / 時系列モデル / 漸近理論 / 積分方程式 / 極限分布 / ブラウン運動 / 統計量

研究概要

(1)非定常時系列モデルに関連てして使われる諸統計量の分布の漸近理論を、ある程度統計量のクラスを制限したものの、統一的な観点から構築することができた。特に、極限分布の正確な計算方法について過去の研究ではきちんと行っていなかったが、本研究においてフレッドホルム・アプロ-チとして提案することができた。
(2)反転不能な時系列モデルの統計理論は、非定常自己回帰の場合よりもはるかに複雑であり、一般理論を構築することは困難である、というのが現時点での認識である。この点については未だ完全な解を見い出してはいないが、問題の本質は捕らえることができ、近似的な解については研究論文としてまとめることができた。しかし、まだまだ不十分であり、今後とも完全解を得るための努力をして行きたい。
(3)上記(1)、(2)の結果はあくまでも漸近的、あるいは極限的結果であり、これらが有限標本に対してどの程度妥当するかを調べるのも興味ある所である。本研究では、モデルの誤差項の分布型を様々に想定した上でシミュレ-ション実験を行った。その結果、極限理論は中心極限定理のような標準的な理論の場合と比べて、分布型にはあまり左右されないことがわかった。従って、有限標本における性質を研究する場合には、極限理論に基づいて研究してもよいという理論的な正当化を得ることができた。
(4)今後の研究としては、上述(2)の問題を追求することと、さらに(1)で述べたフレッドホルム・アプロ-チに代替するより優れたアプロ-チが存在するかどうかの検討を当面の対象として行きたい。

研究成果

• [文献書誌] Tanaka,K.: "Asymptotic Properties of the Manimum-Likelihood and Nonlinear Least-Sguaresd Estimators for Noninvertible Moving Average Models" Econometric Theory. 5. 333-353 (1989)
• [文献書誌] Tanaka,K.: "Asymptotic Distibution of the Least Squares Estimator of the Cointegrating Vector" 経済研究. 41. (1990)
• [文献書誌] Tanaka,K.: "The Fredholm Approach to Asymptotic Inference on Nonstationary and Noninvertible Time Series Models" Econometric Theory. 6. (1990)
• [文献書誌] Nabeya,S.: "A General Approach to the Limiting Distribution for Estinators in Time Series Regression with Nonstable Autoregressive Errors" Econometrica. 58. (1990)
• [文献書誌] Nabeya,S.: "Liniting Power of Unit Root Tests in time Series Regression" Journal of Elconometrics. (1990)