1.本年度はソ連・東欧9ヵ国の経済改革の進捗状況を個別的に調査することが課題であったが、東欧が激動期に入ったため、内外の新聞報道の追跡、各国経済の専門家との聞き取り調査などに追われた。また来日したソ連・東欧諸国の経済学者との意見交換もきわめて有益であった。 2.チェコスロバキア経済の専門家との、経済改革をめぐる意見交換をきっかけに、同国国営企業法の邦訳テキスト、クラウス蔵相ら経済予測研究所メンバ-のごく最近の論文を入手することができた点は、資料収集のうえで、大きな収穫であった。 3.アルバニアを除くソ連・東欧各国の政治・経済改革に関する情報を収集し、その検討を通じて、経済改革の動向を分析し、『エコノミスト』などの雑誌にその成果を発表することができた。 4.その要旨は次の点にある。改革最先進国はハンガリ-で、それにポ-ランドが続いており、両国は西側同様の市場経済、混合経済、資本主義的経営メカニズムに移行しつつあること、改革中進国であるソ連、ブルガリアは、87年頃より改革を推進しているが、例えば市場経済よりも計画経済を基本にする傾向が示すように、社会主義イデオロギ-への拘泥が強く、中途半端な改革にとどまっていること、政治的激動を経験したル-マニア、チェコスロバキア、東独は、これまで改革後進国であったが、今後は飛躍的に改革が進む可能性あり、特に東独はハンガリ-を追い越して、急速に資本主義化すると予想され、チェコスロバキアもソ連などを追い越してハンガリ-改革を急追しそうであること、ル-マニアは極端に疲弊した経済のもとで急速な市場経済化は難しいが、漸次その方向に進むであろうと推測されること、以上が明らかになった点である。 5.来年度は、動向の一層の発展についてより詳細な検討をすすめる。
|