研究概要 |
本年度は、次の二つの面からの研究を行なった。第一は、1979年以来の中国の改革の総括である。沿海地域経済発展戦略をおしすすめる上で、中国国内に、外資を有効に利用しうるようなメカニズムを打ち立てる必要があるが、その到達点の確認をする必要に迫られたからである。中国の改革目標は、従来の集権的・物集的計画経済システムを、企業に権限を下放し、国内経済の運行を市場メカニズムに委ねる、分権的・市場的計画経済システムに変えることにあったが、現実に形成されてきたものは、地方(省・市・区)の地域割拠主義を基盤とした地方分権的・混合的(指令的計画、指導的計画、市場調節の混合した)計画経済システムであった。国内の企業は、依然として国家(但し地方政府)に従属しており、外資を有効に利用しうるような国内システムの形成にはほど遠いとの結論をえた。 第二は、日本、アジアNIES,ASEANを中心とする地域資本主義経済圏の形成の歴史の総括である。中国が参加しようとしている国際分業関係が、どのような歴史的、国際的条件のもとで形成されてきたのかの総括は、今後を展望する上で欠かせないからである。1970年代に形成された、この地域の資本主義経済圏は、日本の高度経済成長、アメリカに肩代りした日本からの、韓国、台湾、東南アジアへの資本、技術援助、及びアブゾ-バ-としてのアメリカの存在を重要な条件としていた。今後、アメリカのアブゾ-バ-としての役割を従来のようには期待しえない以上、日本のこの面での役割は大きいとの結論をえた。第二にかかわる研究成果は、『東アジア近現代史』(編著)の一部として、すでに発表した。
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