研究概要 |
発表予定、およ発表済みの本年度の論文内容に関して概要を述べる。“Competitive and Imperfectly Competitive Labor Markets in Urban Areas,"(forth coming,Journal of Regional Science)では、都市、地域の労働市場の構造とそこに於ける内生的賃金決定の問題を分析した。従来、地域的市場構造については、2つの大きな考え方が並存していた。ここでサムエルソンパラダイムと呼んだ考え方は、各地域の中心地にそれぞれ競争的市場があり、その競争的地域市場間でまた財および労働の移動を通じて均衡関係が成立していると想定するものである。もうひとつは、ホテリングパラダイムと名付けられた考え方で、ここでは財、労働移動のフリクションが地域的独占力(または地域的買い手独占力)を伴う不完全競争市場を必然的に発生させると想定するものである。本研究では、競争市場と不完全競争市場を同時に含む新しい理論体系を提示し、これらの異なる市場間の相互依存関係を研究して、従来の大きな2つのパラダイムの統合をめざした。経済主体は、自分の効用最大化、利潤最大化の視点からどちらの形態の市場をも選択して使用できるから、競争的市場と不完全競争の相対的大きさと重要性は、理論の内生的均衡決定の問題として分析できる。次に、“Information Conts and Rigid Prices under Spatial Competition" (Aoyama Journal of Economics)の論文では情報が不完全な状態での不完全競争を考え、価格調整の不十分性と不完全情報の関連を分析した。地域的不完全競争の理論は小売業の競争を理論的に解明するのに適しているので、このような価格調整の不十分性を探求する理論研究は、より発展させることで新しい流通理論を形成する基礎として期待が持てる。 (774字)
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