本研究の目的は、地域、都市周辺に分布する不完全競争市場の機能に着目しながら、経済的空間的広がりの中での価格変動と資源配分の特徴を分析することである。まず、5月にJournal of Regional Scienceから発表した“Compettrive and Imperfectly Competitive Labor Markets."では、都市周辺に分布する競争的市場と不完全競争市場との相互関係をモデル分析した。ここでは都市周辺に存在する労働者と企業が、プライマリ-な競争的労働市場とセカンダリ-な不完全競争的市場をそれぞれどの程度利用して雇用決定を行うか、2つの市場間の相互依存的均衡関係が分析の焦点であった。また交通費がそれぞれの市場における賃金や雇用量の決定にいかなる内生的影響を及ぼすかも議論し、都市の発展がこれら2種類の労働市場の相対的重要性をどのように変化させて行くか新たに分析した。また、ペンシルベニア大学のWorking Papers in Regional Scienceに2つの論文を発表した。 “Simultaneous Equilibris in the Spatial Product and Labor Markets"では、一般に財市場より労働市場の方が不完全度が高いことに着目し、財市場と労働市場、競争的市場と不完全競争市場という二重の相互関係を、都市周辺地域における資源配分の問題として考察した。この論文では、地域的経済政策の効果は、マクロ経済学などで般に分析されている結論と極めて異なったものであり、地域的政策独自の特性を考慮した経済運営の必要性を理論的に強調した。別の論文“On Relative Price Rigidity under Spatial Competition"では、都市周辺の均衡地域における立地と価格の硬直性の問題を、ミクロ経済学的な価格調整費用との関係から新たに明らかにした。価格硬直性を内生的に解明することは、ミクロ経済理論でも難問の一つであるが、都市、地域という空間的広がりの中で新しく考察を試みるのは、非常に興味深いことと思われる。
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