平成3年度の資料収集については、古書購入のほか、6〜8月に3回の資料収集出張を行なった。古書では、自游書院他より「山東省畜産関係資料」(33点)ほか多数の資料文献を購入、名古屋商工会議所情報サ-ビスセンタ-(6月12〜13日)、滋賀大学(7月29日)富山大学・(7月30〜31日)山口大学(8月8〜10日)では、それぞれに在華居留民経営・経済関連の貴重な文献資料を複写した。当初は、1930〜40年代の在華日本人経営の資料を収集すべく努力したが、結果としては、1910〜20年代の在華日本人経営・経済に関する多数の資料を含めて収集できた。 これらの文献資料と平成1・2年度に収集した文献資料についての整理・分析を行ない、平成3年9月末に研究論文「大連商業会議所常議員の構成と活動ー1910ー20年代大連財界変遷史ー」を執筆した。本論文(400字×100枚)は、1910年代央に設立された大連商業会議所の幹部構成・会員構成の変遷を、実業家の出自や経営動向にまでたちいって考察したものであり、1920年代央まで商業会議所活動の指導権を掌握していた「政商的企業家」常議員が「満州」経済不況と金融不祥事の影響で財界活動から後退し、これにかわって「専門的経営者」型実業家が商業会議所常議員に就任していくことを明らかにした。また、1920〜30年代の山省・青島の居留民会・商業会議所の活動についても、いわゆる低利資金返済問題を焦点として考察をすすめており、論文を準備中である。また、「満州国」建国期の日本人商工業者の対満進出と営業活動については、いまだ資料の整理段階であり論本執筆には至っていないが、平成5年春をめどに論文をまとめる予定である。以上のように、本研究の研究成果は、その1部が刊行される(5月)段階であるが、1910〜20年代を含めて研究成果を早期に出せるよう努力している。
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