1.金融市場における情報に関する検討結果:(1)問題毎に「情報」という言葉の内容を明確に定義する必要がある。(2)金融市場の制度・慣行は、情報の非対称による逆選択を回避するための低コスト手段である。(3)銀行は借手の内部情報を知り得る立場にあり、その貸出し行動は借手についての内部情報を持たない他の貸手に対するシグナルとなる。(4)銀行貸出の特徴は、キャッシュ・フロ-の不確実性に対処するための低コストの手段であるという点にある。 2.日本の金融市場の特徴の検討結果:(1)日本の金融資本市場のさまざまな特徴は、信用秩序維持システムから派生したものである。(2)独禁法の適用除外、有担保制度、協調的行動、メインバンク制、株式持ち合い等の日本的特徴は、いずれも情報との関連で理解すべき問題である。 3.金融制度分析の理論的フレ-ムワ-クとしては、当該の制度が不確実性と情報コストを低下させるための最も低コストの手段であったという認識の下に、そのコスト構想の変化を考慮し、より望ましい制度のあり方を探るという方法が適当である。技術的には動学的最適化のモデルが利用できる。 4.信用秩序維持の具体的方法については、価格や他の預金者の行動が期待形成に関して新たな情報源となるという観点から、合理的期待と時間的非整合性問題を考慮する必要がある。 5.インフレ情報の伝達スピ-ドに関するデ-タ収集を終了したのでさまざまな観点からの分析を進めている。
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