当該年度において、国の内外の文献を整理しつつ国際課税の基本的フレ-ムワ-クについての理論的考察はまとめられたと思う、その内容は以下のようである。 1.国際化の視点と税制 1980年代に入ってのヒト・カネ・モノの国際間の移動の急速な拡大が税制上も種々な問題を招来していることをまず指摘する。国内税制のみでは、国際的な経済活動に伴う税制上の問題を処理しえず国際課税の分野が重要になってきている。 2.国際課税の基本ル-ル 課税権は各国の政府のもつ国家主権である。したがって放置しておくと、国際間き取引に伴いタックス・ウォ-が生じ大きな混乱を招く。そこで今日、各国の政府がもつ2つの基準-源泉地ル-ルと居住地ル-ルの理論的側面を明確にする必要がある。この基準を、課税の公平、中立という租税原則と結びつけて整理する。 3.課税ベ-スの国際間移動 節税を目的に、経済主体とりわけ企業はしばしば低い税負担の国で納税しようとする。このため国際間で課税ベ-スの移転が生じる。この手段として、移転価格とタックス・ヘイブンがありこの実体を検討する。 4.国際的二重課税とその是正 どこの国の政府も、源泉地ル-ルと居住地ル-ルを双方主張することから、国際間で同じ所得に二重に課税される現象が生じる。これを是正する手段が外国税額控除であり、また国外所得免除方式がある。そのメカニズムを各々分析した。
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