税制と国際資本移動との関係を分析するにあたって、本年度は制度の実態の把握ならびにデ-タの収集に努め、次年度の本格的研究のための準備をすることを課題としていた。 本研究は、日・米・韓・台4ヵ国間の実証研究を目指しているが、制度の複雑さもさることながら、利用可能なデ-タが乏しいという困難がある。とくにわが国ではデ-タ面での制約が大きく、たとえば外国税額控除の実態なども解明されていない。そこで相対的に豊富なデ-タを持つアメリカに昨年末出張して、現地の研究者並びにデ-タを管理している商務省の担当者に直接面談する機会を持ち、アメリカを中心とするデ-タの収集を積極的に進め、大きな成果をあげることが出来た。しかし韓国、台湾の制度の把握ならびにデ-タの収集については、まだ十分な成果が得られておらず、引き続いて次年度においても進める予定である。 一方、理論的な側面については、最近の研究のサ-ベイを行うとともに、予備的な研究として、この分野の代表的な研究の一つであるハ-トマン(D.Hartman)モデルを日本からアメリカへの製造業の直接投資に適用してみた。この分析を行うには日米両国の法人企業の収益率デ-タが必要となる。そのため、われわれ自身の従来の研究を発展させ、適切な資本収益率の計測を行った。その研究成果は昨年末にロ-マで開催された応用計量経済学会で発表した。しかし、税制と資本移動の関連については、十分な分析対象期間をとることが出来なかったこともあって、有意な結果を得るまでには至らなかった。今後の課題としては、分析期間の延長を行う(そのためのデ-タの準備は最近整った)とともに、企業行動のより適切なモデル化など理論的な面での一層の拡充を図る予定である。
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