本研究の目的はイギリスの経営システムの特性を19世紀中葉から1970年代までの歴史的スパンのもとで明らかにしようとするものである。経営システムの分析にあたっては経営学でいう「モノ」「ヒト」「カネ」の三側面に着目し、イギリスにおけるそれらの態様とその歴史的変化を追求し、どのような諸条件のもとでどのような変化・発展をとげたかを跡づけ、イギリスの経営システムの歴史的姿態の描出を試みるものである。本年度は本研究実施最終年度として従来までの研究の総括をも試み以下のごとく実施した。 19世紀中葉のイギリスは「取引所経済」の特性をもつものとして規定しえよう。それは市場経済にかかわる取引コストを低減することにより経済全体の効率的運営を可能にした。しかしながら19世紀末葉期以降の「第2次産業革命」の進展のなかでその適合性が襄なわれてきた。したがって企業は取引コスト低減のために市場から組織への転換という展望を得ることになる。企業の組織革新が推進されるためには、ヒト、とくに経営・管理者資源の企業内への蓄積が必須となる。しかしイギリスの場合にはモノ、ヒトにかかわる「内部化」がいちじるしく遅れ、それによる取引コスト削減の遅れがイギリス企業のパフォ-マンスを損なう条係をつくりだすことになった。この内部化の遅れがもたらされた条件としてわれわれはとくにイギリス企業の人事・労使関係戦略のあり方を重視した。そしてこのヒトにかかわる戦略が総じてその製品戦略のあり方に連動することを考察した。以上
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