本研究の目的は、企業戦略と会計情報システムとの関係を経験的かつ理論的に実証することである。そこで、まず、企業の会計情報システムに環境要因と組織要因とを取り込んでそれとの関係を理論的に分析し、また分析フレ-ムワ-クについて検討することによって、実証研究を行うだけの理論的な準備をした。その結果、次のような仮説を発見・提示することができた。すなわち、 (仮説一)企業の会計情報システムは、組織の直面する環境要因にコンティンジェントである。 (仮説二)企業は、それぞれ戦略類型に適応した会計情報システムを設計している。 (仮説三)変化の激しい経営環境に適応していく企業は、定量的な指標だけでなく、定性的な指標をも提供しうる会計情報システムを開発している。 (仮説四)企業が長期的に存続・発展していくには、ハイテク環境下において適応するような会計システムをも保持している。 こうした仮説から得られた成果を踏まえて質問調査票を作成し、それを日本の東証一部上場の鉱・製造業の全社680社に対して、各社の経理担当役員(または経理部長)に郵送し、回答を得た。そして現在、これを次年度の(実証)研究に利用できるようパソコンに入力してデ-タベ-スを作成している。いまのところ、新しい知見としては、ア)企業の環境行動のパタ-ンにそれぞれ固有の会計システムがある、イ)企業戦略と管理会計システムとの間に有意な関係がある、ウ)コンティンジェンシ-理論になんらかの有効性がある、の三つの含意であり、これに確信を深めている。なお、今年度はとくに仮説四を導き出すにあたり、新たな論文(別記)を執筆した。
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