本研究の目的は、企業の戦略と会計システムとの関係を経験的かつ理論的に実証することである。まず、両者の関係を理論的に分析していく過程で、いくつかの仮説を発見し提示することができた。そして、実証研究を行うための理論的な準備段階で、ア)企業の環境行動のパタ-ンにはそれぞれ固有の会計システムがある、イ)企業戦略と管理会計システムとの間に有意な関係がある、ウ)コンティンジェンシ-理論には何らかの有効性がある、の三つの含意を得た。 他方、仮説から得られた成果を踏まえて質問調査票を作成し、それを日本の東証一部上場の鉱・製造業の全社680社に対して、各社の経理担当役員(または経理部長)に郵送し、回答を得た。そこでは、とくに技術環境と会計システムとの関係について、ア)日本企業は、バランスのとれた分析型が多く、攻撃型も3割近く占めている、イ)攻撃型は、かなり技術的要因を重視している、ウ)工場の生産の自動化をフォロ-する管理システムが、かなりの範囲にわたってコンピュ-タ化されている、エ)FAの形態でいえばFMSがかなり導入され、CAD&CAMの導入率が顕著である、などが見てとれた。この成果は学会(日本会計研究学会第37回東北部会ー平成2年10月ー)で発表した。さらに今年度は、環境、なかでも技術環境の変化に企業がどのように対応しているかを見るために、工場の生産の自動化であるFMSやCIMについて何社か訪問調査を試み、理論を検証する上で有意義な成果を得た。これについても、学会誌で発表(本年7月)の予定である。
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