研究概要 |
当該年度は,次年度の最終研究結果報告のために,4人の研究を進展させた。 中野は,19世紀のアメリカにおける簿記・会計理論の発展を概観する作業を行うとともに,それと並行して,主として同時期の個人企業主ないし比較的少数のパ-トナ-から成る中小企業の会計事情について検討を加えた。そこでは、いわゆる資本主理論の教える簿記原理に従った実務が観察できた。 それに対して,山地は,主として同時期の大企業の会計実務を会計情報公開の観点から把握すべく,鉄道会社の会計ないし巨大非鉄道会社の会計を,州の証券規制の問題を加味しながら考察した。その結界,鉄道会社の証券規制に用いられた会計と,ブル-・スカイ・ロ-の下での証券規制に用いられた会計とでは,その計算・公開のいずれの面においても異なっているとの暫定的仮説を得るに至った。さらに,証券規制に用いられる会計は,中野の研究による中小企業の会計ともその意義が異なっている。したがって,アメリカの20世紀への転換期頃の会計状況は,大企業対中小企業,あるいは,規制対自発というような,重層的構造をとって展開していたと思量される。 高須は,20世紀の主として大企業の会計の発展を,連結財務諸表の視点から把握すべく,前年度に関口によって作成されたUSスティ-ルの財務諸表のデ-タベ-スを利用しつつ分析を行った。そこでは,アメリかの巨大企業の連結財務諸表が,実は巨大な経済連合体としての企業群をあたかも一つの企業として示す単独財務表であるかのように理解できるという結論を得た。 以上の結論をふまえて,次年度では,アメリカ企業会計の重層構造をさらに明確にして,最終報告書の作成にあたる計画にしている。
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