研究概要 |
わが国政府は、昭和63年度から海外油田の買収に対する促進税制として「石油供給安定化投資促進税制」を創設した。これは、日本の石油会社や商社などが海外で生産中の油田を買収した場合に、取得価額3.5%相当額の税額控除または初年度の取得価額の15%相当額の特別償却を選択できるというものである。日本鉱業(株)は、昭和63年3月末アメリカの大手石油会社コノコから石油鉱区権を買収し、約1,000億円にのぼる石油公団の投融資を受け一挙に11社の探鉱・開発会社を設立した。同社は将来、原油輸入量の三割の60,000バ-レルを自前原油にする計画で、その資金は10億ドルを越えるという。日本石油(株)、石油資源開発(株)、出光石油開発(株)も鉱区や生産井戸の買収を検討している。 このような投資税額控除は、アメリカにおいて1962年歳入法によりはじめて導入され、その後67年、71年にも制度化している。税金が免除されるのでそれに相当する損益計算書上の税引後純利益が増加するが、問題は、その純利益は何時の時点で実現するかということである。これについては、基本的には二つの異なる見解がある。一つは、投資税額控除を税金の減額とみる立場(「即時繰入法」といわれる)であり、他は取得資産の減額とみる立場(「繰延法」といわれる)である。理論的には、井尻雄士教授は「繰延法」を支持し、ケラ-教授(T.F.Keller)は「即時繰入法」を支持している。ヘンドリクセン教授(E.S.Hendriksen)は、「どちらの方法を決定するかについて結論的な証拠を提供することができない」という。問題は「利益」とは何か、有形償却資産の「価値」とは何か、である。このような基本的問題の解決を中心にすえながら、会計基準の「経済的効果」を検討することが必要である。
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