研究課題
研究の目的は無限次元微分Galois理論を確立すること、およびその応用である。無限次元微分Galois理論の建設は前世紀以来の懸案であり、多くの研究がなされて来た。これらの遺産を整理統合することから出発した。Galois理論として確立された次の2つがある:(1)古典Galois理論、即ち代数拡大のGalois理論、(2)有限性を持つ場合の微分Galois理論(Kolchin理論と呼ばれる)。この他に明確な型を持つに到っていない無限次元微分Galois理論がある。これを確立するのが目的である。微分環論は可換環とその上の微分{d_1、d_2、…、d_n}の理論であり、特にn=0の場合、過常の可換環論を含んでいる。しかし、Kolchin理論における微分体のGalois拡大の概念(強正規拡大という)は古典Galois拡大を含んでいない。無限次元微分Galois理論を明確にするためには、まずこの矛盾を解消しなければならない。つまり、古典Galois拡大とKolchinの強正規拡大を統一するような定義を発見しなければならない。何故、このような不快な相違が生じてしまうのかを分析し、これを取り除くことに我々は成功した。このことにより、無限次元微分Galois理論が、いかなるものであるべきか推定できるようになった。無限次元微分Galois理論の確立には、Vessiotの1948年の論文が重大な役割を果した。上に述べた定義の統合および、Vessiotの一つのアイディアを発展させて、無限次元微分Galois理論の構成に一つの解答を提出した。我々の理論の応用をするには到らなかった。Painleveの第1方程式の、我々の意味でのGalois群を決定し、それによって既約性を証明するので次の目標である。
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