研究概要 |
1.まず、複素射影空間から任意のリ-マン多様体への安定調和写像は多重調和写像になる。我々は、領域を複素射影空間に限定せず、一般にコンパクト・ケ-ラ-多様体でその第1チャ-ン類が正でかつ、その第2ベッチ数が1である場合については考察した。この条件をみたすものをいま、Mとする。最初の結果は、Mからコンパクト型の既約エルミ-ト対称空間への安定多重調和写像は、正則又は反正則になるという事実であった。これの系として、複素射影空間からコンパクト型の既約エルミ-ト対称空間への安定調和写像は、正則又は反正則になることがわかる。第2の結果として、複素射影空間から正の断面曲率をもつコンパクトケ-ラ-多様体への安定調和写像は、正則又は反正則になることがわかった。 2.次に、正則でも反正則でもない多重調和写像があるかという問題についてだが、領域が可約な場合では、全測地的写像を用いて、そういうものを作ることができる。領域が既約あるいは、もっと一般に、複素多様体とするとき、複素射影空間への正則写像が存在すれば、それを用いて多くの正則でも反正則でもない多重調和写像が作れることがわかる。小平の埋込定理より、例えば1.のMは、複素射影空間への正則写像をもつ。しかし、我々の最終目的は、すべての多重調和写像の構成理論を確立することである。コンパクト・リ-マン球から複素グラスマン多様体への調和写像はすべて、ある正則写像から明確な方法で構成されることが近年、イ-ルス学派の研究により明らかになっている。我々の研究はイ-ルス学派の結果を高次元に拡張することである。結果として、Mをその第1チャ-ン類が正なるコンパクト複素多様体とするとき、Mから複素グラスマン多様体G_k(C^n)への多重調和写像はすべて、ある正則写像から、或は、有理型写像から明確に構成されることがわかった。(k=2,3,n=≦12)
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