研究概要 |
当該年度では,主にスラント・イマ-ジョンの研究を行った。複素射影空間内の部分多様体で,その接ベクトルが,複素射影空間の概複素構造の作用により,部分多様体の接空間とのなす角がいつでも一定であるとき、スラント部分多様体であると言われる。この概念は、B.Y.Chenにより導入されたが,ケ-ラ-部分多様体,全実部分多様体は,この例になっている。しかし,それら以外の例は余り知られておらず,部分多様体の次元が2のときは,定曲率の2次元球面から複素射影空間への極小はめこみの部類により,スラントであるものの例が知られていた。 部分多様体の次元が2より大きい場合には,スラントであるかどうかを判定するのは一般には難しい。そこで我々は,ケ-ラ-多様体からの多重調和写像の安定性および正則性を調べたときの方法を応用し,前年度で構成した多重調和写像の中にスラントになるもの(適当な条件のもとで)を捜した。結果として、まず,第2ベッチ数が1であるケ-ラ-C空間から複素射影空間への同変等長はめこみは,スラントになることがわかった。次に,その条件を満たすものを構成しなくてはならないが,ケ-ラ-C空間から複素射影空間への同変正則等長はめこみは,中川ー高木両氏によりたくさん存在することが知られているので,それらを初期条件として,多重調和写像の族を構成すると,それらは,複素グラスマン多様体への同変等長はめこみになっており,そこでグラスマン多様体を複素射影空間にプリュッカ-・埋めこみ(これは同変正則等長はめこみである)ではめこんで,2つのはめこみを合成すれば,同変等長はめこみの例ができる。そして,これがスラント部分多様体の例を与える訳である。
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