研究概要 |
特性根の重複度が変わる双曲型方程式は,C^∞の意味で適切かどうかはその方程式の低階によって決まる.特にC^∞の意味で適切でないような低階を与えたときは,その双曲型方程式の基本解は,その表象が共役変数ξに関して指数的増大度をもつフ-リェ積分作用素で表現される.このことをはっきり示すために,我々はまず指数的に減少するジェヴレイ関数の共役空間として超関数の属を定義する.これはフ-リェ像が任意の正数εに対してexp(ε<ξ>^<1/κ>)で評価されることで特徴付けられる.この評価を超局所化したものとして超波面集合(ultra wave front set)を定義する.この超波面集合は,対象となる超関数のフ-リェ像がいかに下からexp(C<ξ>^<1/κ>)(Cはある正数)で評価されるかをきっちりと表現する強力な武器となる.続いて,L_1=θ^2_t-t^<2j>θ^2_x-at^kθ_x(0<__-k<j-1)とL_2=θ^2_t-t^<2j>θ^2_x-aθ_x(j=even)という2つのC^∞の意味で適切でない双曲型方程式の初期値問題の基本解を作り,その解の超波面集合の伝播を厳密な形で求めた.前者については,t=s(<0)に初期デ-タを与えて方程式の初期値問題を解いたとき,その解の波面集合はt=0で分岐を起こし,超波面集合が生じる.これを厳密な形で求めるには,L_1の基本解を求めるときに常微方程式d^2y/dz^2-(z^<2j>+bz^k)y=0に対するStokes係数を求めることが必要となる.つぎに,L_2=θ^2_t-t^<2j>θ^2_x-aθ_xに対する初期値問題は{0,ξ)【minus-plus】R^1_x×R^1_ξ=T^*R^1_x}にのみ基本解の超波表面集合が現れてくる.これを計算するためには,複素相関数をもちフ-リェ積分作用素の種々の積公式が必要となる.我々はこの研究において,超波面集合の諸性質を調べることと複素相関数をもつフ-リェ積分作用素の種々の積公式を導くことを行い,作用素L_1L_2の解の構造についての研究を行った.現在は上の概念及び手法がさらに広い作用素に適用されるかを考えている.
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