研究課題
通常の線形モデルにおいては、いかなる線形仮説に対してもF-検定が可能であり、その検定方式は一様最強力不変である。ところが、モデルにおける誤差ベクトルの共分散行列をspherically symmetricなものから一般の正値対称行列に拡張すると、どのような線形仮説に対してもF-検定量が構成されるとは限らない。この問題に着目し、任意の上記共分散行列のもとに、平均ベクトルがindividual effectをもつrepeated measures modelを設定した。まず、具体的なものとして説明変数が2次元の場合、上記共分散行列がいかなる形であっても、線形仮説を構成するある種の部分空間を見出すことによって、この仮説がF-検定可能であることを示した。また、この方法を説明変数が一般の多次元である場合に拡張し、F-検定可能である線形仮説に対応する部分空間を構成した(第3回日中シンポジウム、東京、1989、11月に発表)。次に、誤差ベクトルの共分散行列を上記のように一般化すると共に、誤差ベクトルが従う確率分布として正規分布を仮定しない線形モデル、一般化されたrepeated measures modelを研究した。誤差分布として正規性を想定してモデルを規定するパラメ-タの推定量ならびに検定量を取扱う場合、これら方式の良さが、実際には誤差ベクトルが正規分布に従わない事態においても損われない。すなわち方式の妥当性が問題となる。平均ベクトルの推定量を正規性仮定の場合と同様な形式によって構成すると、この漸近分布が誤差分布の如何にかかわらず同一の正規分布であること、一方、共分散行列の成分の推定量を同様に構成すると、この極限分布は正規分布ではあるがその共分散行列が誤差分布の変更に影響を受けることを示した。また、平均ベクトルのより一般的な線形仮説に対するF-検定形式の検定量が漸近的に妥当であることも示した(第6回日韓統計会議、釜山、7月:第47回国際統計学会、パリ、8〜9月に発表)。
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