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x線銀河団の観測から示唆されている銀河団の冷却流の進化とその熱的不安定過程は銀河形成過程との類似性から興味がもたれている。この過程を明らかにするため、非線形な密度揺らぎの熱的不安定性に対する解析を銀河団の重力の効果を考慮して初めて行った。x線の観測から冷却流の質量流束は銀河団中心に近づくにつれ減少することが示唆され、その機構として熱的不安定性が提案されていた。非線形揺らぎの成長を解析的に調べることは困難なので、安定で高精度な数値流体力学コ-ドを開発しス-パ-コンピュ-タ-を用いて解析した。今年度は簡単のために冷却流を平板平行2次元流と仮定し解析した。解析結果から非線形な密度揺らぎが銀河団の重力に引かれ落下すると、渦度が発生、成長し、そのため密度揺らぎが変形し、その振幅が低下する過程が初めて明らかになった。また、この過程が起こる条件は、密度揺らぎの波長と振幅、そしてその近傍の冷却流の性質で決まることを示した。この条件は極端に振幅の大きな密度揺らぎの場合を除き、密度揺らぎは成長できないことを示している。次に、銀河団を球対称重力場で近似し、その中の冷却流について軸対称2次元流の仮定をし同様の解析をした。その結果、非線形密度揺らぎの進化は平板平行流の場合と同様に渦度の発生と成長で密度揺らぎは壊れることが明かとなった。この条件は平板平行2次元流と同様であることが解った。これらの結果は、銀河団の冷却流では熱的不安定性が起こりにくいことを示しており、x線観測から示唆されている冷却流の質量流束の低下を単純な熱的不安定で説明することは困難であることが明かとなった。しかし、渦度の発生が熱的不安定性を妨げることから、銀河間ガスの磁場が渦度の成長を妨げ熱的不安定を促す可能性を考えられる。次年度はこの可能性について検討する予定である。
以上の結果の一部は、論文として発表あるいは発表予定である。
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