研究概要 |
自転の効果によって,高速自転星に励起されることが予想される低い振動数をもつgモ-ド振動が起こす星の表面での速度場および温度の変動によって引き起こされるスペクトル線輪郭変動を,自転の効果を正確に考慮して計算し,早期型星に観測されるスペクトル線輪郭との定性的一致を見た。この研究は,従来行なわれていたこの種の計算において自転の効果が十分に考慮されていなかった事に対してその不当性を示唆すると共に,以前から我々が提唱している早期型星におけるgモ-ドの励起が実際におこっている事を示唆している。 非動径振動のエネルギ-を考察することにより,高速自転星においては正のエネルギ-を持つ振動と負のエネルギ-を持つ振動が存在することを明らかにした。よく知られているpモ-ドとgモ-ドの振動はすべて正のエネルギ-を持つが,自転星の対流層に存在する慣性波の半分は負のエネルギ-を,残りの半分が正のエネルギ-を持つ。負のエネルギ-を持つ振動が,正のエネルギ-を持つ振動と共鳴を起こすと,エネルギ-が負のエネルギ-を持つ振動から正のエネルギ-を持つ振動に流れ,振動の振幅が増大することが解明された。この研究により,以前に見つけた高速自転星におけるgモ-ドの励起が,負のエネルギ-を持つ対流核の慣性振動と,正のエネルギ-を持つ外層のgモ-ドが共鳴を起こすことによるものであることが明らかになった。さらに,この事実を利用すると,観測されているスペクトル線輪郭変動星の変動周期から,それらの星の内部の対流核の自転周期および温度勾配についての情報が得られることを明らかにした。
|