研究概要 |
本年度の研究は,当初の予定に沿って順調に行なわれた。おもな実績は以下のとおりである。 1.X線光学部品の検査および評価手順の確立。HXTのX線光学部は,精密加工された多数の金属部品を含み,それらの寸法精度を正確に測定することが重要である。このため拡大投影器を用いた自動測定,レ-ザ-回折パタ-ンの自動測光などの自動測定方法を開発し,部品の検査・評価の手順を大幅に短縮した。また1989年末よりフライト用部品の納入が始まっており,それらの検査が開始されている。 2.光学系鏡筒の熱変形試験。X線光学部の鏡筒は,熱ひずみを極小にするため,炭素線繊強化プラスチック(CFRP)で作られる。鏡筒の試作品に対しさまざまな熱変形試験を行い,HXTに必要な寸法安定性が満たされていることを確認した。 3.X線光学部の組立・調整手順の確立。精密な寸法合わせのジグや,光を用いた組立・検査台を開発し,またグリッド透過率を測定するための2軸回転テ-ブルの制御系を作成した。これにより,X線光学部をきわめて高い精度を保ったまま組み上げる手順が確立した。 4.X線平行ビ-ムによる較正。宇宙科学研究所のX線平行ビ-ム施設を用い,HXT光学部の総合特性を較正する方法を開発しつつある。 以上の成果により,HXT光学部の開発は大きく前進し,本研究の目的を十分に達成しつつある。現在,フライト用部品の検査・組立てが急ピッチで進められており,可視光を用いた較正ののち,1990年4月よりSOLAR-A衛生の第1次かみ合わせに供されることになっている。また本年度はこうしたハ-ドウェア作業に加えて,「ぎんが」衛星を用いた星のX線フレア観測も行い,太陽フレアを理解するための広汎な研究をすすめている。
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