研究概要 |
クェ-サ-には多種の吸収線があり,宇宙の赤方偏移が0.3から4に至るまでのほとんどの時期をカバ-している。本研究では,(1)CIVを主とする重元素の高イオンの吸収線,(2)HIの3種(ライマン・アルファ-・フオレスト,ライマン・リミット系,飽和したライマン・アルファ-線)の吸収線,の2つのカテゴリ-を取り上げ,その起源と進化について調べ,初期宇宙の物理状態を明らかにした。 (1)のCIV吸収線は,銀河のハロ-中のガスによる吸収と考えられ,その数密度変化のデ-タを手掛りにして,ハロ-の力学状態・重元素量の増加率・背景紫外光の強度変化を計算した。その結果,ハロ-は急速な膨張状態にあり,重元素量も活発な星生成に伴って急速に増大していること。一方,背景紫外光は一定の強度のまま変化していないことが明らかになった。赤方偏移が2から3の期間の銀河進化は動的で,100KPCを越えるガスハロ-が広がっていたことを示している。また,背景紫外光の強度が変化していないことから,クェ-サ-以上からの寄与がなければならず,若い銀河の大質量星も紫外源となっている可能性が高い。 (2)のHIの3種の吸収線を,冷たい暗黒物質によって閉じ込められた銀河間の雲(ミニ・ハロ-)の進化状態として統一的に理解できることを明らかにした。この雲は,背景紫外光によって,イオン化・加熱されており,その強度変化によって進化する。雲の外緑部は,高イオン化されてライマン・アルファ-の森として観測され,中心部は紫外光が届かず低いイオン化状態のため飽和したライマン・アルファ-線吸収として観測されることになる。このミニ・ハロ-の質量の大きいものは収縮して星生成が起こり銀河となり,(1)の吸収線系として観測される。 こうして,クェ-サ-の吸収線系全体を,冷たい暗黒物質が卓越する宇宙で一連のものとして理解できることが明らかになった。
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