宇宙の大域的な構造は一様、等方性を仮定してロバ-トソン・ウォ-カ-時空で表される。しかし現実の宇宙は大小色々なスケ-ルでの非一様性がある。このような現実の宇宙での非一様を一般相対性理論でどのように取り扱うのか、また大きなスケ-ルでの平均的な一様、等方時空は局所的な非一様時空とどのような関係にあるのかは大きな問題であった。本研究はアインシュタイン方程式の空間平均をとり、ポスト・ニュ-トン近似を適用することで、この二つの問題を同時に非常に満足のゆく形で解決した。これによって具体的に現実的な宇宙の時空のメトリックを構成する近似法が確立された。この近似法を用いて、光の伝播を考察し、宇宙論的な意味での距離の定義にまつわる不確実さを解析し、一般的な距離と赤方偏移との関係を書き下すことができた。また計算機で質点をランダムにばらまき非一様宇宙を構成し、その中に光を通す計算を実行し、実際に光が非一様性によってどのように影響を受けるかを考察した。これによって、通常用いられている距離の式がある場合には必ずしも適当ではないことが示された。さらに非一様性の最も重要な効果である重力レンズを考察し、レンズの作用をする銀河の分布などの統計的な観測をすることにより宇宙定数などのようなこれまで観測が難しいと考えられていた宇宙構造を決定するパラメ-タ-を観測する手段を堤案した。宇宙のパラメタ-の一つである平均密度を決定する方法として、銀河の固有速度と平均密度との関係がある。従来この関係は密度揺らぎが非常に小さい場合などしか求められていなかった。我々はある状況において密度揺らぎが任意に大きな場合にも当てはまる関係を導いた。3K背景輻射の観測は通常、宇宙が大域的に一様、等方であることの証拠と解釈されるが、我々は必ずしもそうではなく宇宙が大域的に非一様であっても観測と矛盾しないことを指摘した。
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