本研究では互いに密接な関係にある弦理論の構造と統計多体系の相転移点近傍での構造の場の理論的考察を行なって次の結果を得た。 1.弦理論は、弦の画く二次元世界面上の共形不変理論として捉えられるが、様々な共形理論を抱摂的に記述する枠組みとしてFeiginーFuchsの自由場表示が注目される。我々はその中でも最も基礎的重要性を持つSU(n)KacーMoody代数系及びそれに随伴するパラフェルミオン系の自由場表示を得ることに成功した。 2.様々な弦理論の関係を調べるには、重力の自由度も含めた二次元の場の理論全体の考察が重要である。近年二次元重力理論の厳密解がマトリックスモデルの手法により得られたが、一方向一の結果が概念的に非常に異なるトポロジカルな場の理論により再現されることが明かになりつつある。我々は共形不変性を持つトポロジカルな場の理論の定式化を提唱し、新しい閉じた代数構造を見いだした。 3.近年脚光を溶びている高温超伝導現象解明の鍵として、長距離の反強磁性秩序が重要であると思われるが、我々は反強磁性ハイゼンベルグ模型の長距離有効理論がO(3)非線形シグマモデルで与えられることを示し、場の理論の手法を用いてこれを解析した。また弱い三次元性の解析も行なった。 4.ド-ピングのある場合の高温超伝導はtーJモデルによって記述され得る。我々はこれに対する有効理論であるCP^1モデルの場の理論的解析を行い、実験とよく合う、相構造、転移温度、等を得た。またホ-ルペアの凝縮の機構を見いだし、これが高温超伝導の主要なメカニズムを与えることを提唱した。
|