研究概要 |
原子核のベ-タ遷移確率は,天体核現象の問題の結論を導く際に重要な役割を果たす。この時必要となる遷移強度の多くは理論計算に依らざるを得ないが,従来用いられてきた値は単純化された模型計算に依るものであり,より正確な理論値を求めることが望まれる。この研究では,多くのsd殻核及びfp殻核について,大次元殻模型によって系統的に構造計算を行う。ベ-タ遷移強度から,星の内部の物質密度,温度における電子捕獲反応率を求め,超新星爆発,元素合成の解明に供する。電子捕獲の進行の度合が超新星爆発が起こるかどうかを左右することが,星の数値実験によって明らかになってきている。 平成2年度はまず,平成元年度に行ったsd殻核の電子捕獲反応率,ベ-タ崩壊率,ニュ-トリノによるエネルギ-損失率等のいわゆる原子核の弱過程に対する遷移確率を表にしてまとめ論文の形にした。Fowler等のいわゆるFFNの表との比較,数値計増の精度の問題等ていねいに取り扱ったので時間を要した。近くAtomic Data and Nuclear Data Tablesに投稿する。次に,同じくsd殻核の陽子過剰核のβ^+崩壊に対する(sd)^n配位による大次元殻模型計算を行った。陽子過剰核のベ-タ崩壊のエネルギ-は大きくとれて,ベ-タ崩壊だけでガモフ・テラ-遷移強度の分布,総和値が得られる。通常のsd殻核のベ-タ崩壊に対しては,Wild^'enthal等の研究の結果クウェンチング因子(G^<eff>_A/G_A)^2=0.60が得られている。しかし,ベ-タ崩壊に対して大きなQ値を持つ陽子過剰核では,観測された総和値と計算値とを比較すると,このクウェンチング因子を計算値にかけても実験値からずれる場合があることがわかった。このような研究は理論,実験とも,天体核現象に対する応用からも,核構造研究の上からも重要である。この研究はRhysical Review誌に近く掲載される。fp殻核の計算は今後の課題として残された。
|