研究概要 |
自然界の四つの基本的な力の法則を記述する統一理論として、拡がりを持った物体の量子論を研究することがこの研究計画の目的であった。弦模型の性質の理解を深め、それと並行して膜(membrane,2次的に拡がった物体)模型の量子論を作ることに焦点を当てた。弦模型と膜模型は各々2及び3次元の場の理論と見なすことができ、最近の低次元トポロジカル場の理論の発展と関連してくる。膜模型の研究には、I)模型の数学的な解析、II)模型の質量スペクトルや量子効果を求めるなどの物理的な解析、の二つの面があり、両者の研究を行った。 I)膜模型の量子論を構成する上で、この模型のゲ-ジ対称性を理解することが鍵となる。このゲ-ジ対称性の一部(residual,ゲ-ジ変換)として面積保存変換が知られており、数学的には、W_∞代数(W_n代数のn→∞の極限)という無限次元代数で表現できることが最近明らかになった。W_n代数の超対称化に関連して次のような成果を得た。 a)W_n代数の超対称化ができた。 b)超対称W代数を伴った超対称なソリトン系が構成できた。 c)超対称リ-代数に基づいて超対称KPヒエラルキ-を導いた。この結果を用いて超対称なW_∞代数が構成できそうである。 d)a)ーc)の結果をN=2超対称性を持つ場合に拡張できた。 以上の結果は、超対称な膜模型を解析する上で有用な数学的方法を与えるが、一方、超弦模型のコンパクト化を扱う数学的な枠組みも提供する。 II)弦模型の量子論ではワイル不変性というゲ-ジ対称性が重要な鍵であったが、この研究計画で、ワイル不変な膜模型を作り、この模型の量子効果を研究中である。結果が出るまでにもう少し時間がかかるが、最近研究が進んでいる3次元重力などと関連して、興味のある結果が得られると思われる。
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