絃理論を特定の時空構造によらない形に定式化にすることによって、重力および素粒子の基本的相互作用の統一理論を構成することを目的に研究を始めた。そのため、現在与えられている絃理論の数学的に不明な点の整備、初期宇宙における真空構造、共形場形式の理論の対称性を非質量殻上で表現する問題等を具体的テ-マとして以下のような成果をあげることが出来た。 1. 光円錐ゲ-ジにおける絃の場の理論において、ロ-レンツ異常項相殺の機構を、S-マトリックスの計算、BRST演算との対応関係の解析等の方法で分析した。 (論文1、2、3) 2. 現在提唱されている時空構造によらない絃模型(Φ^3模型)の数学的に不明な点を解明し、その一般座標変換不変性の証明を中点時間処方を用いて行った。 (論文4、5、8、9、10) 3. 初期宇宙の真空構造を解明するため、アインシュタイン理論に立ち帰って、作用積分をゼロにするインスタントンによって引き起こされる位相変化を伴う相転位に取り組んだ。そのため、準古典近似にかわってボルン・オッペンハイマ-法の有効性を提唱した。 (論文6) 4. 径路積分に基づいた絃理論と絃の場の理論との関係をより明確に把握するために、“絃そのものを生成・消滅させる演算子"という概念を研究し、径路積分のやり方でWeyl変換不変性を要求することが、絃の場の理論の運動方程式と等価であることを証明した。更に絃の場の理論の持つBRST対称性が、実際の絃の散乱振幅にどの様に反映しているかを調べた。(論文11、12、13) 5. 二次元重力理論に現われるVirasoro代数が非臨界次元の絃理論においてどのように解釈されるべきかを研究した。 (論文14) 6. 本研究の付随的成果として、二次元QCDの代数化(論文7)及び光円錐ゲ-ジの場の理論の総合報告(図書1)である。
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