昨年度の研究活動を引き継ぎ、平成2年度には(1)異常項を持つゲ-ジ理論の研究と、(2)ゲ-ジ理論の物性物理への応用をさらに推進した.その内容は以下の通りである。 1.東北大の三宅氏と共同で続けてきた異常項を持つゲ-ジ理論の研究を4次元の非可換ゲ-ジ理論の場合に拡張し、カレント代数と異常項の関係を考察した。異常項があってもゲ-ジ理論の代数的構造が保たれ得ること、従って後者のほうがより基本的であることを示す議論を展開した。現在論文を執筆している。 2.(1)電荷密度波 昨年度1次元伝導体の電荷密度波の発生と加速の機構をカイラル対称性の観点から考察した論文を発表したが、これに続いて、不純物、温度、フォノン分散の効果を考察した論文を発表した。1次元電子格子系の長波長の構造にはKacーMoody代数に基づく局所カイラル対称性が現われることを指摘し、1次元系の電荷密度波の性格を明確にするきとができた。これらの仕事はニュ-ヨ-ク市立大学の崎田教授との共同研究である。 (2)エニオン 高温超伝導現象と端数粒子統計に従う励起(エニオン)の関係が現在注目されている。3次元ゲ-ジ理論の見地から端数粒子統計を考察し、長波長で現われる端数粒子統計が短波長では消失する事を示す論文を発表した。 (3)量子ホ-ル効果 磁場中の電子を(1+1次元の多成分ディラック場として)記述する集団場の理論を構成し、ホ-ル伝導度の量子化の問題をベリ-位相との関連で考察した。現在、論文を準備するとともに、不純物効果の検討を進めている。
|