ミュ-オン触媒核融合サイクルの要となるミュ-オン分子の構造および分子内核融合反応率の解析を行った。組替えチャネル結合法により、ガウス型試行関数を用いる三体系変分法計算が行われた。最も重要な(dtμ)分子のエネルギ-について、純ク-ロン力エネルギ-計算の他に相対論的補正、真空偏極補正、重陽子・三重陽子の有限サイズ補正、重陽子の励起効果補正等々の計算を行った。これによれば、純ク-ロンエネルギ-は、最も重要なJ=υ=1について、-660.3meV、相対論的補正は+0.9meV、真空偏極補正は+17.2meV、核の有限サイズ補正は+10.4meV、重陽子励起補正は-2.0meVである。補正の合計は+20meVに達しており、ミュ-オン分子形成率の温度依存性のデ-タの説明のために非常に重要な役割をすることが解った。 月の表面で発見された大量の^3Heを利用するd+^3He核融合が注目されているが、ミュ-オン触媒によるd+^3He核融合はあいにく効率的でないことが解った。(d^3Heμ)分子内核融合が(^3Hed)_<LS>+d+Xーray反応に比べてはるかに遅いことが算出されたからである。 ミュ-オン触媒核融合サイクルの重要な過程の1つに(dμ)原子から(tμ)原子へとミュ-オンが移行する反応がある。基底状態間の移行反応率は我々の組替チャネル結合変分法で約2.8×10^8sec^<-1>と算出され、実験値と良く一致している。問題は、励起状態間移行であり、従来、古典的取扱いの範囲では基底状態間遷移に比べて3ケタも速いと算出されていたが、我々の準備的研究では基底状態間よりもやや遅いと算出された。これはサイクルの理解に大きな影響を及ぼすので詳しい検討を来年度に実行する。
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