ミュ-オン移行反応の研究が本年度の中心的課題であった。断熱近似を仮定しない組み替えチャネル結合法によるミュ-オン移行反応解析コ-ドが完成し、dμ(1s)+d→tμ(1s)+d反応の解析が行われた。低エネルギ-領域(0.001ー0.05eV)において、観測値との良い一致を示した。高エネルギ-領域(>0.05eV)については、観測値はないが、100eVまで精密計算が行われた。数十eV領域では、移行反応率の2ケタ増大が予測された。ミュ-オンの運動が2keV程度であり、これに比して、核間の運動は今100eV以下を考えているので、断熱近似はかなり良いと予想された。我々の非断熱近似計算と比べると、高エネルギ-領域では良い近似になっているが、しかし、低エネルギ-領域ではfactor2ー5の違いが生じているこの差は、断熱近似の座標の取り方の不適切さのため、漸近領域でのミュ-オン原子の内部エネルギ-を正しく表現できず、0.1eV程度のズレを生むためであり、入射エネルギ-がこれと同程度の場合は誤差がめだつことになる。また、H_2+D_2+T_2の三重混合系の中で、このミュ-オン移行反応がに桁も促進されることが分かった。移行反応(pμ)+d→(dμ)+p+135eVにおいて、発生した(dμ)が50eV程度のエネルギ-をもっていること、および、移行反応(dμ)+t→(tμ)+dが、入射エネルギ-50eV程度のとき2ケタ反応率が増大すること、などから判明する。
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