研究概要 |
カラ-・フラックス・チュ-ブ・モデルを用いて相境界でのバリオン透過率を計算した。この結果を,宇宙のQCD相転移の次数が一次との仮定でビッグバン宇宙初期に適用し,相転移終了までにクォ-ク・グルオン相中のバリオン数密度がどこまで高密度になるかを計算した。その結果,150<TcMeVならばバリオン数密度分布はほぼ一様に近く,Tc<150MeV,且つ,10^5<σ<10^7MeV^3ならば密度分布は大きく揺らぎ,揺らぎの間隔が10〜100mであることがわかった。更に,100<Tc<250MeVで,且つ,σ<5×10^5MeV^3ならば高密度領域が核物質密度以上に達して,ストレンジ・クォ-ク物質が形成される可能性があることを明らかにした。 Tc<150MeV,且つ,10^5<σ<10^7MeV^3の場合,元素合成過程が一様密度分布を仮定する標準ビッグバンモデルによるものから大きく異なる。その結果,始源的元素合成理論から導かれる結論が変更される可能性がある。第一は,インフレ-ション宇宙モデルが結論する閉じた宇宙をバリオン質量だけで実現できる可能性,第2は,始源的ストレンジ・クォ-ク物質,ブラックホ-ル,黒色矮星などバリオン起源の暗黒物質で消えた質量問題を解決できる可能性である。有効QCD理論から得られたバリオン数密度分布の揺らぎを初期条件として、非一様モデルによる元素合成の理論計算をやり直した結果,流体力学的不安定性に基づく一様化を取り入れた範囲では,第一の可能性を否定できないことが示された。又,始源的ストレンジ・クォ-ク物質が宇宙初期で核子へ蒸発しきらず,生き残る条件を数値的に求めた。1つのクォ-ク物質が持つバリオン数が10^<39>以上であれば,生き残る。
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