研究概要 |
p殻ハイパ-核の生成に関しては,CohenーKurath型の信頼できる波動関数を得ていたので,計画どうり,(K^ー,π^ー)と(π^+,K^+)反応について,今年度は,スピン反転成分をも含む素過程の新しい演算子を用いた取扱を完成し,ハイパ-核生成の反応断面積とともに偏極生成確率を計算した.配位混合波動関数を用いると,反応断面積は単純な1配位によるものと同程度で実験を再現するものとなるが,偏極確率は以前の値より少し小さな値となり実験との比較が期待される.中重の質量数の典型として ^<28>Siを標的核とする(π^+、K^+)反応について,小川氏による配位混合波動関数を用いたハイパ-核生成反応強度関数を理論的に求めると,反応断面積は1配位の値に比べて約1/2となり,おおきな改良をすることができた. スピン反転成分が極めて重要な(γ,K+)反応については,チェコスロヴァキアのグル-プと共同して,単純1配位による断面積と偏極の計算が可能になったので,これを配位混合波動関数の場合に拡張しつつある. π中間子的崩壊については,よく使われる光学ポテンシャルに矛盾なく対応した繰り込み効果をも考慮して,p殻からPbに至る広い範囲のハイパ-核の崩壊確率の最終的理論値をまとめた.とくに質量数100〜200の重い糸では,π^ーに対するク-ロン引力の効果が著しく大きいことが分かり,結果的に0.5%以上程度の分岐比を有することを予測した.軽いハイパ-核のπ中間子的崩壊確率は各々の殻構造に依存して大きく変動するという興味ある結果を得た.また非常に軽いΛー及びΛΛーハイパ-核から3体連続終状態への崩壊強度を,KapurーPeierls法を適用して理論的に評価する方法を提起し,実験の存在するΛ^5Heについて良い結果を得た.
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