研究概要 |
本研究では、サイズが数nmの半導体超微粒子中の励起子状態の輻射寿命が構成分子数に逆比例して、粒子サイズの増大とともに減少する現象(励起子超放射現象と呼ぶ)の直接観測を試み、バルク結晶では顕著には現われない励起子コヒ-レンスの本質を超微粒子中で探ることを目的とした。具体的には、Naclマトリックス中のCuCl微粒子の励起子発光スペクトルについてピコ秒時間分解測光を含む次の研究を行った。 (1)マトリックスの形状を変化させると、発光のスペクトル形状、空間的分布、寿命に大きな変化が生じた。再吸収・再発光効果が発光の長寿命成分を支配しており、発光の量子効率が極めて高いことが明らかとなった。このことから、発光の励起直後の過渡的減衰成分が本来の励起子寿命を反映していると結論された。 (2)励起子吸収帯内を直接励起すると、鋭い共鳴発光が観測された。この発光寿命の過渡的減衰成分は、発光エネルギ-に著しく依存し、微粒子サイズが大きい程、短くなる。この寿命と発光効率から求まる励起子輻射寿命は、微粒子サイズが半径に換算して1.6nmから7nmに変化した際、6nsから0.08nsまで2桁近くの減少を示し、ほぼ微粒子体積に反比例して変化した。これは、花村により予想された励起子コヒ-レンスに基づく励起子超放射現象に定量的に一致した。特筆すべき成果である。 (3)サイズの大きな微粒子の励起子輻射寿命には温度依存性があり、高温ほど増大するが、これは励起子コヒ-レンス長が微粒子サイズを下回るため、超輻射が一部崩れるものとして、理解された。 今後の課題としては、励起子の均一幅から求まる励起子コヒ-レンス長に関する情報と(3)の結果との関連を調べること,新規購入した二次元画像観測装置とストリ-クカメラを直結し、発光の空間分布の時間依存性を測定し、再吸収効果のメカニズムを探ること等が上げられる。
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