伝導帯、価電子帯の端が、ほぼ正弦波的に変調されるバンド端変調半導体構造膜の作製は、アモルファスSi_<1-x>N_<x:>H合金膜を用いることによって可能となった。結晶の場合は、その合金において任意の組成で2種類の元素を混ぜ合わせることは出来ない。しかし、アモルファスにおいては、それが可能となる。本研究では、組成xを膜の堆積方向に垂直に変調することによって、上記の変調構造膜が作製される。このような膜で極小ギャップ1.91eV、極大ギャップ4.05eVのような変調振幅の比較的大きい膜を、SoH_4、H_2の混合ガスとSiH_4、NH_3、H_2の混合ガスを位相をずらせてグリ-放電チェンバ-内に導入することによって作製した。最初にこのような膜を用い、変調周期の関数として光学ギャップを測定した。その結果、光学ギャップの増加分は変調周期の逆数にほぼ逆比例して増加することが分かった。この結果は、光励起によって生成された電子と正孔が、それぞれ伝導帯極小と価電子帯極大近傍に存在し、その受ける変調ポテンシャルが調和振動子ポテンシャルで近似出来るとして、それによる量子化準位を考慮することによって説明される。このような量子サイズ効果は、本研究によって初めて観測された。次にルミネッセンススペクトルの変調周期依存性を低温にて測定した。そのピ-クエネルギ-は光学ギャップの変化を反映して、変調周期の逆数にほぼ逆比例して増大する。特に、ベルク膜と違う顕著な結果は、ピ-クエネルギ-の励起エネルギ-依存性である。励起エネルギ-が大きくなると、電子、正孔がそれぞれ伝導帯極小、価電子帯極大からエネルギ-的により離れた準位へ励起され、その励起位置での〓状態への緩和を経て互いに再結合してルミネッセンスを放出する。いわゆるホットルミネッセンスの存在が実証された。このような新しい人工物質は、基礎物性的にも興味あるものであることが明らかになった。
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