研究概要 |
C15b型の結晶構造をもつ金属間化合物YbInCu_4はTu〜40Kで価数転移を示すが、その価数転移とYb-In間のzincblende型秩序度との関係や価数転移の際の電子状態の変化をミクロに調べるために、ハイパワ-で位相干渉型の核磁気共鳴(NMR)装置を作製した。今のところ、NMR装置の立ち上げ、およびそれを用いたYbInCu_4における^<115>In核のNMR測定が行われているので、以下に、その研究の概要・成果を記す。まず、磁気的秩序が存在しないことに対応し、全ての温度領域で^<115>In NMRはナイトシフトKがゼロの付近に観測された。T>Tu,T<TuでKは全く異なった温度変化を示し、T〜TuでKに不連続な飛びができるが、その際、Tu近傍(35〜60K)でそれぞれに対応した二本のラインが観測され、その強度比が変化することが明らかになった。このことはこの価数転移が一次転移であることを示している。Kの温度変化は巨視的磁化率χに対応して、T<Tuではほとんど一定、T>Tuでキュリ-則的な温度変化を示す。このKとχは直線的にスケ-ルし、その間の超微細結合定数は物質の電子状態を反映しているが、YbInCu_4ではT>TuとT<Tuで結合定数が5倍程度変化し電子状態に大きな変化があることが明らかになった。更に動的観点から調べるためにスピン-格子緩和時間T_1の測定を行った。その結果、T_1はT>TuでYb^<3+>の局在モ-メントを反映した一定の値を示し、また、T<Tuではパウリ常磁性的コリンガ関係を示すことが明らかになった。このことは、T=Tuにおける価数転移が局在モ-メント系からフェルミ液体系への転移であることを示している。これに関して、阪大・基礎工のグル-プ(中村・中島・北岡・朝山)と共同研究を行い、^<63>Cuの核四重極共鳴を測定することにより同様の結論を得ている。今後、(Yb-In)サイト内の秩序構造と価数転移との関係や磁場誘起価数転移に及ぼす影響を系統的に調べ、価数転移の機構解明へと迫っていきたい。
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