本年度の研究は、凝閃亜鉛鉱型構造(ZnP)^-へ軽元素Li^+が規則的に挿入されたLiZnPのフォトルミネッセンス(PL)測定を中心に行った。848nmと615nmの2つの発光を有するAタイプと830nm付近にブロ-ドな発光を有するBタイプが観測された。n型LiZnPのドナ-準位は低抗率の温度依存性の結果から伝導帯の下端約110meVに位置し、77KにおけるLiZnPのバンドギャップが約2.13eVであることを考慮すると、タイプAの615nm(2.02eV)発光はVp(燐原子空孔)ドナ-から価電子帯への放射再結合によるものと考えられる。Vpの存在はラザフォ-ド後方散乱法による組成分析から示唆された。GaAs中のV_<A8>(ヒ素原子空孔)ドナ-‐アクセプタ-複合体による発光の類推から、848nmの発光はVpドナ-‐アセプタ-複合体による放射遷移と考えられる。615nmの発光強度は励起光強度の増加に伴ってブロ-ドな848nm発光のそれよりも増加した。これは、Vpドナ-‐アクセプタ-複合体による放射遷移よりもドナ-‐価電子帯間遷移の方がLiZnPのバンドギャップの“直接遷移性"を反映し、再結合確率の増加を著しくしている。タイプBの発光はバルク結晶の他、石英基板上のLiZnP薄膜からも観測された。このブロ-ドな発光はタイプAの発光を示す結晶よりも多く観察される。これは、育成結晶の多くがp型伝導を示すことと関係があると思われる。このとき、PL発光はVpドナ-‐アクセプタ-複合体による放射遷移によって支配され、タイプAおよびB中のアクセプタの起源は本質的に同じものであると思われる。その起源についてはさらに詳細な研究が必要である。
|