(1)低温用光高調波発生(OHG)測定装置の完成。本研究費補助金により低温用液体窒素クライオスタット(Oxford社製、DN1704)を購入し、既存のOHG測定装置に組み込んだ。これにより-190℃から室温に渡る温度領域で±0.1℃の温度安定を保ちながらOHGを測定することが可能となり、この装置の適用性が大幅に拡大された。この装置を用いて以下の測定を行った。 (2)不整合相における光第2高調波発生(SHG)の測定。次の3種の強誘電体につき測定を行った。 (2-1)(NH_4)_2BeF_4(AFB)結晶。この結晶については不整合相においてSHG信号は全く観測されなかった。強誘電相においてMaker法によりコヒ-レンス長の温度依存性を詳しく測定し、それを不整合相に外挿して求めた値と、X線回析から決定した変調周期とを比較したところ、コヒ-レンス長は変調周期に比較して2桁も大きく、準位相整合による共鳴条件から著しくはずれていることを明らかにした。これがこの結晶の不整合相でSHGが観測されない理由である。 (2-2)K_2Zncl_4(KZC)結晶。KZCからのSHGは、結晶をアニ-ルすることにより著しく変化し、処女結晶に比較して2桁も強度は弱くなる。さらに不整合相において、SHG強度は非常に長い緩和時間(数時間)で減少し、平衡値に達することを見い出した。これらの現象を、ソリトン格子が不純物(H_2O)によりピン止めされる機構により説明した。 (2-3){N(CH_3)_4}Zncl_4結晶。自発分極が通常の強誘電体に比較して3桁も小さく、かつ3℃という狭い温度領域において発現する強誘電相を、SHGにより感度良く検出することに成功した。不整合相において比較的強いSHG強度が、ロックイン転移点近傍で観測されたが、これはこの結晶の不整合周期が他の結晶に比較して大きいためである。
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