1.強誘電性反転分域構造をもつ物質からの光第2高調波発生 強誘電体の周期的分転分域を利用することによって、光第2高調波の変換効率を向上させることができる。これは結晶のもつ固在なコヒ-レンス長と分域の反転周期を一致させることにより、SHGの位相を整合させる方法である。本研究では、強誘電体の中でも比較的に規則的な層状分域をもち、その構造をある程度制御できるロッシェル塩を用いて、分域構造と光第2高調波発生との関係(分域周期の乱れ、分域壁による位相の擾乱、壁に推積する不純物・欠陥による光の散乱)を明らかにすることを目的に実験及び解析を行った。得られた結果は以下の通り。(1)単分域試料のSHG強度は、目発分極の自乗によく比例するのに対し、多分域試料では、コヒ-レンス長の温度依存性、分域周期、結晶の厚さ及び非線型光学定数の温度依存性に著しく依存する。これらを全て考慮して、観測されたSHG強度の温度依存性が説明できた。(2)周期性分域の波数ベクトルと、入射光の波数ベクトルを平行及び垂直にしてSHG強度を測定した。平行の場合には分域周期が結晶のコヒ-レンス長に近づくにつれて、大きなSHG強度が発生したが、垂直な場合にはSHG強度な非常に弱くなる。これはある時刻で分極の異なる分域から発生するSHG波の位相がπずれるために打消しあうためである。 2.強誘電体からの光第2高調波発生のボンド電荷モデルによる解析プロピオン酸カルシウム鉛結晶のSHG定数とミラ-指数を全て決定した。この定数を、レヴァインのボンド電荷理論により、CaーOおよびPbーOボンドからの寄与に分解した。観測されたSHG定数の異常な温度依存性は、これら2つのボンドからの寄与が異った符号をもつことで説明できた。処女結晶については、対祢性から禁制される成分を観測した。詳しい解析により、これは結晶の対祢性が低下しているために発生する。
|