研究概要 |
酸化物超伝導物質はその構造が複雑である。伝導キャリアを作るための不均一性がある。しかし超伝導のpairing mechanismそのものは簡単明瞭な物理であると考えた。CuO_2面内ではCu^<2+>スピンの間に強い反強磁性的相互作用があり,Nee^`lスピンパタ-ンの短距離秩序ができる。ここにホ-ルができたり,余剰電子が注入されたりすると,これらのキャリアは2個づつ対を作って一緒に動きまわる事で,質量が単独でいたときよりも軽くなって,金属結合のエネルギ-が稼げる。これがMass Reduction Mechanismである。(Izuyama;J.Phys.Soc.Jpn.56(1987)4247;ibid.57(1988)34)本研究によって物質の構造をきちんと取り入れても,数理的には同じことであることを明かした。(Phys.Rev.B,40(1989))更にこれによりT_cやコヒ-レント長の実験値が説明できることを,Jpn.J.Appl.Phys.28(1989)やPhys.Rev.B,41(1990)に発表した。こうしたデ-タが統一的に説明できる理論はほかにない。これを基礎にして本研究を積み上げる。H_<c1><H<H_<c2>における磁束ストリングのトポロジ-が主題。在来型の第2種超伝導体では,Abrikosov格子ができている。酸化物超伝導体では磁束の格子は融解した状態が相図の大部を占めていると言うム-ドがある。そのような状態では磁束のピン止めは難しく,チッリ温度でリニア・モ-タ-を走らせる夢も消える。しかし本研究では基礎理論がU(1)型の超流動である以上,磁束ストリングは曲がり難く,磁束格子が融解してstringどうしがからみ合った状態は,H_<c1>の極く近傍と,H_<c2>の近傍たげにしか現れないことが明らかになった。(Izuyama&Ishizaka京大原子炉.平成元年度ワ-クショップ報告書)なお本研究で,T_cの近くに,外部磁場をかけもいないのに,超伝導体中に,上下両向きの磁束が,互いにからみ合いながら入り込んでいる状態がある事を発見。
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