研究概要 |
酸化物超伝導体のH_<c1><H<H_<c2>における磁束ストリングの配列が,在来の第2種超伝導体中におけるアブリコソフ格子とは根本的に異る点を指摘した。今年度の研究は,あまり強い磁場でなく,0.3テスラ以下の磁場の場合の磁束ストリングの状態を理論的に調べた。磁場をC軸方向にかれたとする。このとき磁束は酸化物超伝導体中をストリング状につき抜けて行く。アブリコソフ格子では,このストリングは総て直線でC軸に平行で,ab面に投影してみると,三角格子をつくっている。酸化物超伝導体中では,たとえばYBCOの場合,Tc〜100Kとして,90<T<100(inK)でかつ200ガウス以下の磁場で。磁束ストリングが自発的に発生していることを理論的に発見した。自発的に,と言うことは,H=0でも磁束ストリングがあると言うことであり,また,上向きの磁束も下向きの磁束もあると言うことであり,また自発的発生の主因がエントロピ-を稼ぐためであるから,磁束ストリングは直線状でなく,くねくねと曲がってからみ合いながら,超伝導体中を貫いていることを指摘した。H<50G(約)では,上向きの磁束ストリングと上向きの磁束ストリングと下向きの磁束ストリングが対になってからみ合いながら(結合状態)くねくねと進み,その中に混って外から加わった磁束がくねくねと独り歩きしている。50<H<200G(約)ではこうした結合状態はくずれ,上向き下向きの磁束ストリングは互にくっついたり離れたりをくり返す。結合状態と解離状能の間には相転移があって,一種のKT転移である。200<H<3000G(約)からT<90Kではアブリコソフ格子になるが、不純物原子や格子缺かんのため,内在的ピン止めがあることを見出した。そのため格子は歪んでいる。
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