負の誘電異方性をもつネマティック液晶に電圧を加えると、あるしきい値以上で空間的に規則正しい二次元ロ-ル状パタ-ンが顕微鏡下で観測される。これはウイリアムズドメインと呼ばれ、一方向に配列した液晶構成分子の空間的配向変化を反映した巨視的秩序構造で非平衡系において現れる典型的な散逸構造である。我々は最近この静的パタ-ンに印加する電圧を大きくしていくとある値以上でウイリアムズドメインのストライプパタ-ンが振動する、空間的にも時間的にもコヒ-レンスの高い秩序構造を見出した。この構造には二種類の振動様式があり、それぞれ異なった電圧でクリティカルに現れる非常に興味深い現象である。本研究はこの新しい秩序構造の定常状態におけるパタ-ンの振動振幅の挙動、空間相関、ゆらぎ等を詳細に調べ、このリミットサイクルの動的構造を明らかにすること及びその乱流化過程を調べることを目的として、科研費補助金により購入した画像処理装置(FRM1ー512:フォトロン)、コンピュ-タ(PC9801RA:NEC)により、振動しているパタ-ンのいくつかの点での像強度変動の時系列測定、解析を試みた。しかし液晶セル(厚さ38、幅80ー300、長さ300ミクロン)の作成段階でいくつかの問題が生じその解決に多くの時間を要した。今年度の半ば過ぎからようやくデ-タがとれるようになり、現在パタ-ン振動の空間構造の液晶セル幅依存性に焦点を当てて研究を行っている。これまでに得られた成果といて、外部パラメ-タ(液晶への印加電圧)を変えてのパタ-ンの挙動が液晶セル幅に大きく依存していることであり、これ等を像強度変動のパワ-スペクトル、空間相関、フラットネス等による定量的解析を進めている状況である。
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