石英ガラスにおいて3.9K付近で熱パルス測定実験を行った。この時、入射パルスパワ-の増大に伴い、熱パルス伝播波形は以下の3つの形状を示す。(1)低入力パワ-時には古典的熱拡散波形を示す。(2)中間パワ-では入射パワ-の増大に伴い著しく到達時間の遅い波形となる。(3)高パワ-時にはテ-ル部分のない鋭いコヒ-レント様波形となる。これらに対し以下のような成果が得られた。(2)の中間パワ-時に、到達波形から見積もれるフォノン平均自由の入射フォノン周波数に対する変化は波動局在現象の議論からの予測と一致する。このことはガラス中における高周波フォノンの局在現象の存在をはじめて実験的に示したことを意味している。これからガラスにおける相関距離はほぼ50Å前後となることが実験的に見出された。この相関距離はガラスの構造単位と考えられるもので、非晶質構造の微視的理解に対し極めて重要な意味を持つものと考えられる。また、従来から未解決であった非晶質の熱伝導現象は数K以上ではフォノン局在現象に支配されている可能性がはじめて実験的に示されたことになる。さらに入力パワ-に伴う到達波形の強度(T)の試料厚(L)依存性は以下のようになった。低入力時、T〓L^<-1>中間入力時T〓L^<-a>(0<a<1)、高入力時、T〓L^<-1.5>。これらの変化はガラス中の熱パルスが古典的拡散伝播を行っているかどうかを調べる場合、基本的な情報となる。その結果、低入力時の場合を除いて、熱パルスは通常の拡散伝播うしていないことがわかった。この実験結果は理論的課題として、今後重要性を増す可能性がある。
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