研究課題/領域番号 |
01540297
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
川崎 辰夫 京都大学, 教養部, 教授 (40025367)
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研究分担者 |
冨田 博之 京都大学, 教養部, 助教授 (70025477)
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キーワード | 準安定状態 / 1次相転移 / ファジ-スピンモデル / ランダムネス / 空間パタ-ン / 保存的TDGL / セルダイナミックス / 双極子能率 |
研究概要 |
系の動的性質の解明には、その存在自身が系の熱力学的性質に決定な影響を与える準安定状態の研究が極めて重要である。これまでも多くの研究がなされてきたが、準安定状態そのものの時空構造に直接取り組むことを、我々は今年度の課題としてきた。 川崎は、準安定状態が顕著にみられるランダムスピン系を取り上げ、スピンの大きさが確率的に分布している新しいモデル(ファジ-スピンモデル)を提唱した。この系は急冷した時準安定状態に富むので、その静的構造と安定性を先ず取り上げ、この状態が発生したスピンのパタ-ン構造と密接な関係のあることを突き止めた。外部からの刺激にたいする準安定状態の安定度は、有限磁場下での急冷で発生するパタ-ン構造や有限温度でアニ-ルすることによる真の平衡状態到達に要する時間等を通じて評価できた。これらの結果を通して、準安定状態に果たすランダムネスの役割を解明する突破口を開いた。以上の結果は掲載論文および平成1年8月にブラジルで開催された統計力学国際会議で報告された。現在このモデルにおける1次相転移と準安定状態との関係に取り組んでいる。 また、富田は熱力学的に不安定な状態から出発して平衡へ向かう途中に典型的な空間パタ-ンを生じる保存的TDGL系について、セルダイナミックスに変形することによりコンピュ-タ動力学を実行した。特に、成長する空間パタ-ンの等方性について、動力学的に異方性を含まない系における初期状態の等方性の保存性に注目し、コンピュ-タ動力学により異方性を表現する量としてパタ-ンの双極能率を追跡した。その結果、双極能率は有限系においては厳密な意味での保存量ではないが、その大きさはパタ-ンの空間スケ-ルの成長に比べて無視できる程度にしか成長しないことが明らかになった。さらに、準安定状態を生じる非保存的TDGL系のパタ-ンについても、同様の解析を実行中である。
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