界面の統計力学

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01540301
• 研究機関: 九州大学
• 研究代表者: 川崎 恭治 九州大学, 理学部, 教授 (40037164)
• 研究分担者: 関本 謙 九州大学, 理学部, 助手 (00179342) ; 長井 達三 九州共立大学, 工学部, 教授 (60069325)
• キーワード: セル構造 / バ-テックス模型 / スケ-ル則 / ゲル / 体積相転移 / 界面活性剤 / ミクロエマルジョン / ハイブリッド模型

研究概要

2次元、3次元のセル構造の時間発展を研究するための新しいモデル(バ-テックス模型)を開発した。バ-テックスに働く力のテンソル性を導入した点で以前のものに優っている。これによる計算機シミュレ-ションを実行し、セル集団の統計的スケ-ル性、セルの関数分布、面積分布等につき多くの新しい知見を得て実験や他のモデルによるシミュレ-ションと比較検討した。
高分子ゲルにおける体積相転移を理論的に理解するため、有限要素法による計算機シミュレ-ションを試みた。
生体膜やマイクロ・エマルジョンに見られる、界面活性剤分子の吸着した界面のミクロな動力学を研究するに適したモデルを提案し、計算機によるシミュレ-ションを行った。例として、相分離する2成分液体と界面活性剤の混合物を取り上げ、2成分液体を連続場で、界面活性剤を離散的分子で記述するハイブリッド・モデルを提案し、計算機実験を行うことにより、我々の提案したハイブリッド・モデルの有効性を確かめた。無秩序状態(完全に混合した状態)からの相分離にともなうパタ-ン形成過程を計算機実験によって調べ、この計算結果を界面活性剤のない単純2成分液体の結果と比較することにより、界面活性剤のある系での界面動力学の特徴、たとえば比較的初期の段階で明確な2相界面が形成されるが、界面の曲げ弾性の効果によりパタ-ンの成長速度が低下することなどが分かった。

研究成果

• [文献書誌] Katsuya Nakashima,Tatuszo Nagai and Kyozi Kawasaki: "Scaling Behavior of Two-Dimensional Domain Growth:Computer Simulation of Vertex Models" Journal of Statistical Physics. 57. 759-787 (1989)
• [文献書誌] Kyozi Kawasaki,Tatsuzo Nagai and Katsuya Nakashima: "Vertex models for two-dimensional grain growth" Philosophical Magazine B. 60. 399-421 (1989)
• [文献書誌] K.Sekimoto,N.Suematsu and K.Kawasaki: "Dynamics in Complex Physical Systems' H.Takayama,ed." 72 (1989)
• [文献書誌] K.Sekimoto,N.Suematsu and K.Kawasaki: "Sponge-like domain structure in a two-dimensional model gel undergoing volume-phase transition" Physical Review A. 39. 4912-4914 (1989)
• [文献書誌] T.Kawakatsu and K.Kawasaki: "Pattern Formation Processes in Binary Mixtures with Surfactants" Proceedings of the Yanada Conference on Strongly Coupled Plasma Physics,29th August-2nd September ed.S.Ichimaru(Elsevuer Science Publishers). (1990)
• [文献書誌] K.Kawasaki and T.Kawakatsu: "Continuum Theory of Immiscible Binary Fluid Mixture with Surfactant" Physica A. (1990)