宇宙初期に起こると考えられている、クオ-クからハドロンへの相転移は弱い1次の相転移と考えられている。ここではその相転移を解析すると同時に、相転移によって作られた凸凹によってどの様に宇宙初期での元素合成が変化するかを明らかにした。 1)凸の部分より元素合成の初期の段階で中性子が凹の部分に拡散する事はすでに知られていたが、我々はその中性子が凸のところでHeの合成が始まると、拡散して帰ってくることを明らかにした。 2)この効果により凸の部分でのHeの過剰生産を避けることはきわめて困難であることを示した。 3)凹の部分では確かに中性子の数は相対的に多く中性子過剰の状態が続くが、重元素が多く作られるわけではない。 4)宇宙をバリオンだけでΩ=1にできるならば、最も簡単で美しい宇宙のモデルとなるが、これまで元素合成の制限から不可能であった。しかしこの非一様な宇宙モデルでは適当なパラメ-タの値を厳選すれば可能であることを示した。 5)クオ-クハドロン相転移を宇宙膨張と共に追跡することにより、この相転移によって作られるバリオンの密度の高い領域の大きさはせいぜい地平線サイズの10万分の1であり、このような小さなサイズでは元素合成の時代の核子の拡散によって消滅してしまい、跡にはなにも残さないことを示した。
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