3年間の研究の結果多くの新しい知見が得られたがここではその主なものだけを挙げることにする。 1.チャンネル数が2、3、30の場合の低エネルギ-用の量子力学に基づく断面積計算用プログラムを作製した。2.(N^<6+>、O^<7+>+H)系に対して、(1)GVBーCI法を用いて電子状態の計算を行ない、ポテンシャルエネルギ-を求め、(2)ETFを含めた動径、回転結合を求め、(3)中間エネルギ-領域で半古典的CloseーCoupling法を用いて衝突エネルギ-0.1〜50keVで電子捕獲断面積を求め、(4)低エネルギ-領域(10meV/amu〜0.5keV/amu)では量子力学的CloseーCoupling法を用いて電子捕獲断面積を求めた。以下この一連の方法を"方法A"と言うことにする。得られた断面積は実験値と非常に良く一致した。3.(N^<5+>+H)系に対し方法Aを用いて電子捕獲断面積を求めた。得られた断面積は実験値と非常に良く一致した。我々の計算結果には(1)低衝突エネルギ-領域において軌道効果と見られる幅広いピ-クが、(2)極低エネルギ-では衝突中に作られる準分子による振動、回転共鳴構造が現われた。4.(N^<4+>+H)系に対して方法Aを用いて電子捕獲断面積を求めた。得られた断面積は実験値と非常に良く一致した。中間衝突エネルギ-領域で全断面積の衝突エネルギ-依存性に興味深い振動構造が現われた。5.(C^<5+>+H)系に対し方法Aを用いて電子捕獲断面積を求めた。得られた断面積は実験値と非常に良く一致した。(B^<5+>+H)系、(N^<5+>+H)系と比較することにより入射粒子に含まれている電子の電子捕獲過程への影響について興味深い結果が得られた。6.(O^<5+>+H)系に対して方法Aを用いて電子捕獲断面積を求めた。得られた断面積は実験値と非常に良く一致した。更にこの結果からこの系では単なる1電子捕獲過程に加え、O^<5+>イオン中の電子が励起する2電子過程も起こっていることがわかった。
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