これまでの各種観測と新規補充観測の総合により、秋田駒ケ岳火山体内のマグマや熱の状態推移を把握すること目標に、下記の研究がなされた。1.現地調査・観測。(1)1m深地温と地磁気(全磁力)の補足観測をした。(2)標高解析のため、標定岩体を選定し、それを空中写真上で同定した。2.磁気解析。既存空中磁気探査と地表観測による地磁気異常分布に対応するマクロとミクロの磁気構造理論モデルを求めた。結局、磁化方向は現地地球磁場方向で、その強さ(CGSemu)はカルデラの外側や底では0.0025、女岳自体は0.012であるとみなされた。女岳山頂部に見られる波長100m程の磁気異常は、女岳山頂付近の旧火口内を満たす岩塊のランダム配列による巨視的消磁によるものとされた。1979年から1988年にかけての全磁力変化を、貫入試マグマの冷却磁化と見て、モデル計算をした。結局、1970年火口の直下約100mの鉛直柱状体、同火口北東200mの地表下約30mの板状体、更に100m程深い横臥板状体の3磁化体の存在を推定した。3.標高変化。1968年以降1988年までの7回の空中写真について各点標高変化を読みとった。明確な高度低下は女岳山頂部でのみ見られた。1972年以降最大0.6m低下している。これは、女岳山頂部での重力の増加と調和的で、山体内圧力の低下を意味する。4.熱伝導解析と総合解釈。1970年噴火の際は、その火口以外にも、マグマの貫入があり、その放熱冷却に伴い、地表高温域は拡大したが、1978年をピ-クに減退した。単純熱伝導と仮定すると、この変化速度に対応する温度伝導率は0.1cm^2/sのオ-ダとなる。通常岩石の固体熱伝導よりも1桁大きく、間隙流体の対流による熱移動を無視できない。熱移動に伴う加熱・冷却による減磁・帯磁、流体圧と温度変化による山体膨張高等等の総合シミュレ-ションが今後の課題である。
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