松本盆地東縁断層断層の北端および南端とそれぞれ延長部に付き重力測定を実施し、新たに約320点で重力異常を求めた。その結果、重力測定点の分布は同断層上で均質かつ密なものとなった。本研究の第一の成果には、地下構造を議論したり、また断層運動パラメ-タを推定する上で貴重な地球物理デ-タを提供できたことが挙げられる。 加えて、二つの特筆すべき成果(新理論の応用と、新技術の適用)があがった。第一にはディスロケ-ション理論と重力異常を結び付ける理論式(OKUBO、1990)を松本盆地東縁断層断層周辺のブ-ゲ-異常に適用し、大成功を収めたことである。この解折により、同断層が逆断層運動を繰り返してきたことが明かとなったのである。 第二は、重力測定点の位置決定にGPS(Global Positioning System)が有用であることを実証したことである。トランスロケ-ションGPS法を使えば、観測点の水平位置、標高が1mの精度で、10分以内に求められることを検証したのは、本研究が本邦では初めてである。GPSが重力異常の研究を支援する有力な技術であることを検証した意義はきわめて大きい。従来は3次元座標を求めることが困灘であったために重力異常を求めることをあきらめていた山岳域などでも、今後はGPSの支援下で重力測定をすすめることにより、均質かつ密な重力異常測定点分布が実現する道を切り開いたと考える。
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