研究目的は、沖縄トラフの拡大するプロセスを琉球島弧の古地磁気学と年代学とからの明らかにすることである。古地磁気学と年代学のための岩石採取を今年度は徳之島、石垣島、小浜島そして西表島にておこなった。古地磁気学は神戸大学にておこなった。消磁には熱消磁を用い、古地磁気方位はKirshvink法をもちいてもとめた。KーAr年代は岡山理科大学の質量分析計にておこなった。今年度の研究と昨年までおこなってきた研究とから次のような結果をえた。 琉球南部の約45Maの火山岩層と10Maの貫入岩の古地磁気方位は大きな東振りの偏角としめした。この東振りの偏角は約4Maの岩石にはみられなかった。いっぽう琉球中部と台湾北部の18Ma以降の岩石の古地磁気方位はほぼ真北または真南をさした。この結果は琉球南部が、10Maから4Maのあいだに、台湾や琉球弧中部と相対的に時計回りに回転したことをしめしている。回転の大きさは台湾北部の約10Maと琉球南部の約45Maの古地磁気方位の比較から19°と見積った。各地域の伏角の大きさは、これらの地域が中新世以降有意な南北移動をしていないことをしめした。古地磁気学と年代学から沖縄トラフの拡大史について次のモデルを組み立てた。沖縄トラフは10Maと4Maの間に拡大した。沖縄トラフの南部は小さなおおぎ形をつくるように開いた。その結果、琉球南部は台湾北部を中心として時計回りに約19°回転した。中部では沖縄トラフは平行に開き、琉球弧中部は回転を伴わず太平洋側へ漂移した。
|